『あしたのジョー』全20巻 その4・ 破滅への道 |
その2・変わる人、変わらない人
その3・ 闘う男たちと魔女葉子 からのつづきです。
ううっ案の定、長くなりすぎています。

何だかだらだら長くて申し訳ない。これで最終回にいたします。
最後まで通して読んでみて思うのは、『あしたのジョー』は闘う話であるけれども、破滅する話でもある。ということでした。
倒れても立ち上がり、闘って、またひとつ破滅へと足を踏みいれていく。
何しろ、ジョーはリングの上でもリングの外でも、ボコボコのボロボロにされすぎる。

鑑別所で、ネジリンボウとパラシュート部隊をくらう。いや、もうこれで死ぬだろ。

両手ぶらり戦法て、つまり無防備に殴られっぱなしじゃないか。ちょっと自分を大事にしてほしい。
そしてウルフ戦。


ダブルクロスカウンターでウルフを破る。
そもそも決め技のクロスカウンターを出すたびに、自分も殴られているんじゃないか。
殴られずに勝つことはできないのか。
そして力石戦。

うわああ!
そしてぼろぼろになって斃れるのはジョーだけではない。

カーロスにやられたタイガー尾崎。

ジョーにやられたハワイの人
・・・これを読んでボクシングやりたいと思う人はいるのだろうか?
そんなジョーだけど、ドヤ街に帰れば安らぎが。


講談社コミックス『あしたのジョー』5巻より
数少ない心温まるシーンに救われる。

講談社コミックス『あしたのジョー』5巻より
主要キャラのそっくりさんが現れるのは昭和のお約束だ。(もしかして今もある?)


講談社コミックス『あしたのジョー』6巻より
ここではジョーも素直だ。あのジョーが。

講談社コミックス『あしたのジョー』11巻より
あのジョーが!!

丹下のおっちゃん、過去の行いがたたってボクシングコミッショナーからつまはじきされる。
おっちゃんの願いをはなから聞く耳もたない会長たちの言いぐさは、その後のことを考えると不吉な予言でもある。
でも それはまた後のはなし。
ひとつ大きな闘いを終えるごとに破滅がジョーを襲う。

力石を試合で死なせたとりかえしようのない事実がジョーを蝕む。
相手の頭を殴れば身体が拒絶して、リングで嘔吐して試合を続けられない。
それでも。






しかしジョーの充実した闘いぶりに、それはないよね。ということに。そして。

矢吹丈そのものが、野生を失って変質してしまうという、残酷な展開に。
この漫画はどこまでもジョーを責めさいなむ。

あの軽快な洒落者が。

講談社コミックス『あしたのジョー19巻より
かつてあんなに闘って心を分かったカーロスの無残な姿に、平常心を失うジョー。
あらためて、ジョーのカーロスへの思いの深さを見る。

そしてそれが、ジョーの明日の姿でもあるのか。

ジョーはそれをとっくにわかっていたんだ。

食えない女葉子に翻弄されつつ、邪険に当たってきたジョーだった。
ここで葉子を捨てて破滅と知りながらリングへ向かうジョーが、初めて彼女に対してやさしさを見せる。


ジョーがどんどん壊れていく。
それでもジョーが闘いをやめず、立ち上がり続けるだろうことは、葉子も私たちももう知っている。

これまで数々の残酷な運命にあらがって越えてきたジョーだったけれども、今となってはみずから望んで真っ白に燃え尽きようとしているのだもの。


たとえジョーが破滅に堕ちようと、2度と目をそらさないと心に決めたのだ。
ジョーが少し驚いたように葉子を見る。
そしてまた、世界一の男に視線をもどす。

チャンピオンの胸中に真っ黒な恐怖がわきあがる。
そうだよ。チャンピオンは破滅と闘ってるんだよ。
そうして長い長い15ラウンドを闘いきった。
葉子を見ながら、グローブを渡す。
「あんたに もらってほしいんだ」
そして、目を閉じている。


「燃えつきたよ ・・・・まっ白だ」
完。
私のジョーのはなしもこれで終わります。もし最後まで読んでくれたかたがおられたなら、ありがとうございました。



